クリプトジャッキング(Cryptojacking)とは?

暗号通貨

クリプトジャッキング(Cryptojacking)は、攻撃者がエンドユーザーの端末を不正に利用して暗号資産(仮想通貨)をマイニングするサイバー犯罪行為です。攻撃者は、マルウェアを用いて多数のエンドユーザーの端末に感染させ、大規模な暗号資産マイニングを実行して収益を上げます。クリプトジャッキングは、ユーザーのコンピュータリソースを密かに利用するため、被害者は感染に気付かないことが多いです。

クリプトジャッキングの仕組み

クリプトジャッキングの攻撃者は、以下の方法でエンドユーザーの端末を利用して暗号資産をマイニングします。

1. マルウェアの配布
攻撃者は、マルウェアを用いてエンドユーザーの端末に不正なソフトウェアをインストールします。これにより、端末の計算能力を利用して暗号資産をマイニングします。

2. ウェブベースのクリプトジャッキング
攻撃者は、ウェブサイトにクリプトジャッキング用のスクリプトを埋め込みます。ユーザーがこのウェブサイトを訪れると、ブラウザがスクリプトを実行し、端末のリソースを利用してマイニングを行います。

3. エクスプロイトキットの利用
攻撃者は、エクスプロイトキットを用いて脆弱なシステムに侵入し、クリプトジャッキング用のマルウェアをインストールします。これにより、エンドユーザーの端末を利用してマイニングを実行します。

 

具体的なクリプトジャッキングの事例

 

1. Coinhiveの悪用

Coinhiveは、ウェブサイト運営者が訪問者の計算リソースを利用してMoneroをマイニングするためのJavaScriptライブラリです。当初は合法的な手段として提供されていましたが、多くの攻撃者がこれを悪用し、ユーザーの同意なしにクリプトジャッキングを行いました。

CRYPTOJacking

具体例
2018年、Coinhiveを悪用した大規模なクリプトジャッキング攻撃が発生しました。攻撃者は、多くのウェブサイトにCoinhiveのスクリプトを埋め込み、訪問者の計算リソースを密かに利用してMoneroをマイニングしました。この攻撃により、被害を受けたウェブサイトの訪問者は、気付かないうちに自分の端末を利用されていました。

2. スマートフォンをターゲットにした攻撃

スマートフォンもクリプトジャッキングの対象となります。攻撃者は、人気アプリのクローンや不正なアプリを通じてマルウェアを拡散し、ユーザーのスマートフォンをマイニングに利用します。

具体例
2019年、Google Playストアで見つかった不正なアプリが、ユーザーのスマートフォンを利用してクリプトジャッキングを行っていることが報告されました。このアプリは、人気ゲームのクローンとして配布され、多数のユーザーにダウンロードされました。インストールされたアプリは、バックグラウンドでMoneroをマイニングし、ユーザーのバッテリー寿命やパフォーマンスに悪影響を及ぼしました。

 

3. 企業ネットワークへの侵入

クリプトジャッキングは、個人の端末だけでなく、企業ネットワークもターゲットにします。攻撃者は、企業のサーバやワークステーションにマルウェアをインストールし、大量の計算リソースを利用してマイニングを行います。

具体例
2020年、アメリカの大手企業のネットワークがクリプトジャッキングにより攻撃されました。攻撃者は、企業のサーバに侵入し、複数のサーバにマイニングマルウェアをインストールしました。この攻撃により、企業のネットワークパフォーマンスが低下し、業務に支障が出る事態となりました。

 

クリプトジャッキングの影響

クリプトジャッキングは、エンドユーザーや企業にさまざまな悪影響をもたらします。

1. パフォーマンスの低下
クリプトジャッキングにより、端末のCPUやGPUが過剰に使用されるため、パフォーマンスが著しく低下します。これにより、ユーザーの作業効率が悪化し、業務に支障が出ることがあります。

2. 電力消費の増加
端末の計算リソースがフル稼働するため、電力消費が増加します。これにより、バッテリーの消耗が早まり、電気代が増加することがあります。

3. ハードウェアの損傷
長時間にわたり高負荷がかかると、端末のハードウェアが損傷するリスクが高まります。特に、冷却システムが不十分な場合、過熱によりハードウェアが故障することがあります。

4. セキュリティリスクの増大
クリプトジャッキングは、マルウェア感染を意味するため、他の種類の攻撃(データ漏洩、ランサムウェアなど)のリスクも増大します。

 

クリプトジャッキングの対策

クリプトジャッキングを防ぐためには、以下の対策が有効です。

 

1. セキュリティソフトの導入

セキュリティソフトを導入し、定期的にシステムスキャンを行うことで、クリプトジャッキングマルウェアを検出・除去することができます。多くのセキュリティソフトは、リアルタイム保護機能を提供しており、マルウェアの侵入を未然に防ぐことができます。

 

2. ブラウザ拡張機能の利用

ブラウザ拡張機能を利用することで、ウェブベースのクリプトジャッキングを防ぐことができます。例えば、NoCoinやMinerBlockといった拡張機能は、クリプトジャッキングスクリプトをブロックするため、ユーザーは安全にウェブを閲覧することができます。

 

3. ソフトウェアの定期的な更新

OSやアプリケーションのソフトウェアを常に最新の状態に保つことで、脆弱性を悪用した攻撃を防ぐことができます。定期的な更新により、セキュリティパッチが適用され、システムの安全性が向上します。

 

4. 不審なリンクや添付ファイルの注意

不審なリンクや添付ファイルを開かないようにすることで、マルウェア感染のリスクを低減できます。特に、メールやメッセージアプリで送られてくるリンクや添付ファイルには注意が必要です。

 

5. ネットワーク監視と異常検知

企業は、ネットワーク監視システムを導入し、異常なトラフィックやリソース使用率の上昇を検知することで、クリプトジャッキングの早期発見が可能です。ネットワーク監視は、リアルタイムでシステムの状態を把握し、異常が発生した場合には迅速に対応できます。

 

クリプトジャッキングの将来

クリプトジャッキングは、仮想通貨の普及とともに増加する可能性があります。以下に、クリプトジャッキングの将来について考察します。

 

1. マルウェアの高度化

マルウェアの高度化

クリプトジャッキングマルウェアは、ますます高度化し、検出が難しくなる可能性があります。例えば、マルウェアは自身の活動を隠すために、リソース使用率を制御し、ユーザーが気付かないようにすることができます。

2. 新しい攻撃手法の登場

新しい攻撃手法が登場することで、クリプトジャッキングの脅威がさらに増大する可能性があります。例えば、IoT(Internet of Things)デバイスをターゲットにした攻撃や、クラウドサービスを利用した大規模なマイニング攻撃などが考えられます。

 

クリプトジャッキングの進化と新しい攻撃手法

 

1. IoTデバイスのターゲット化

IoTデバイス(スマート家電、ウェアラブルデバイス、監視カメラなど)は、クリプトジャッキングの新たなターゲットとして注目されています。これらのデバイスは一般的にセキュリティ対策が不十分であり、攻撃者が簡単にマルウェアをインストールすることが可能です。さらに、IoTデバイスは大量に存在するため、攻撃者が多くのデバイスをまとめてマイニングに利用することで、大規模なマイニングネットワークを構築できます。

具体例
2018年、攻撃者がスマートTVやルーターなどのIoTデバイスをクリプトジャッキングに利用する攻撃が発覚しました。これらのデバイスは、普段からインターネットに接続されているため、攻撃者が遠隔からアクセスし、マルウェアをインストールしてマイニングを行いました。結果として、デバイスのパフォーマンスが低下し、正常な機能に支障が出ることとなりました。

 

2. クラウドサービスの悪用

クラウドサービスは、高い計算能力とスケーラビリティを提供するため、攻撃者にとって魅力的なターゲットです。攻撃者は、クラウドアカウントの認証情報を盗み、クラウドインフラストラクチャを利用して大規模なマイニングを行います。この手法により、攻撃者は短期間で大量の暗号資産をマイニングすることが可能です。

具体例
2020年、複数のクラウドサービスプロバイダーが、クリプトジャッキングによる不正利用を報告しました。攻撃者は、クラウドユーザーの認証情報をフィッシングやブルートフォース攻撃で取得し、クラウドサーバーにアクセスしてマイニングソフトウェアをインストールしました。この攻撃により、クラウドユーザーは予期しない高額の請求を受けることとなりました。

 

クリプトジャッキングの影響と対策

クリプトジャッキングは、個人および企業に対して深刻な影響を及ぼします。以下に、クリプトジャッキングの具体的な影響と対策をまとめます。

 

影響

1. パフォーマンスの低下
マルウェアがシステムリソースを消費するため、端末の動作が遅くなり、ユーザーエクスペリエンスが悪化します。

2. 電力消費の増加
マイニング活動により、端末の電力消費が増加し、バッテリー寿命が短くなります。

3. ハードウェアの損傷
長期間の高負荷動作により、端末のハードウェアが過熱し、故障するリスクが高まります。

4. セキュリティリスクの増大
マルウェアがシステムに存在することで、他の種類のサイバー攻撃(データ漏洩、ランサムウェアなど)のリスクが増大します。

 

対策

1. セキュリティソフトの導入
信頼できるセキュリティソフトを導入し、定期的にシステムスキャンを行うことで、クリプトジャッキングマルウェアを検出・除去します。

2. ブラウザ拡張機能の利用
NoCoinやMinerBlockなどのブラウザ拡張機能を使用して、ウェブベースのクリプトジャッキングスクリプトをブロックします。

3. ソフトウェアの定期的な更新
OSやアプリケーションを最新の状態に保ち、セキュリティパッチを適用することで、脆弱性を悪用されるリスクを減少させます。

4. 不審なリンクや添付ファイルの注意
不審なリンクや添付ファイルを開かないようにし、フィッシングメールや不正なウェブサイトからの感染を防ぎます。

5. ネットワーク監視と異常検知
ネットワーク監視システムを導入し、異常なトラフィックやリソース使用率の上昇を検知することで、クリプトジャッキングの早期発見と対応を行います。

6. IoTデバイスのセキュリティ強化
IoTデバイスに強力なパスワードを設定し、ファームウェアを定期的に更新することで、セキュリティを強化します。

クリプトジャッキングの実際の対策例

具体例:企業のネットワークセキュリティ対策

ある大手企業は、クリプトジャッキングの脅威に対処するために以下のような対策を実施しました。

1. エンドポイントセキュリティの導入
全てのワークステーションとサーバにエンドポイントセキュリティソフトをインストールし、リアルタイム保護と定期スキャンを実施しました。

2. ネットワーク監視システムの導入
ネットワーク監視システムを導入し、異常なトラフィックやリソース使用率の上昇をリアルタイムで監視しました。これにより、早期に異常を検知し、迅速に対応できるようにしました。

3. 従業員向けセキュリティ教育
従業員向けに定期的なセキュリティ教育プログラムを実施し、フィッシングメールの識別方法や安全なインターネット利用についての知識を提供しました。

4. IoTデバイスのセキュリティ強化
オフィス内の全てのIoTデバイスに強力なパスワードを設定し、ファームウェアを最新の状態に保ちました。また、デバイスメーカーと連携してセキュリティ基準を導入しました。

 

具体例:個人ユーザーの対策

個人ユーザーもクリプトジャッキングから自身を守るために、以下のような対策を講じることができます。

1. セキュリティソフトの使用
信頼できるセキュリティソフトをインストールし、リアルタイム保護と定期スキャンを有効にします。

2. ブラウザ拡張機能の利用
NoCoinやMinerBlockなどのクリプトジャッキング対策ブラウザ拡張機能をインストールし、不正なスクリプトをブロックします。

3. ソフトウェアの更新
OSやアプリケーションを常に最新の状態に保ち、セキュリティパッチを適用します。

4. 不審なリンクや添付ファイルの注意
不審なリンクや添付ファイルを開かないようにし、フィッシング攻撃から身を守ります。

5. 定期的なネットワーク監視
自宅のネットワークを定期的に監視し、異常なトラフィックやリソース使用率の上昇をチェックします。

結論

クリプトジャッキングは、エンドユーザーの端末を不正に利用して暗号資産をマイニングするサイバー犯罪行為であり、ユーザーや企業に深刻な影響を与えます。攻撃者は、マルウェアやウェブベースのスクリプトを利用して、エンドユーザーの計算リソースを密かにマイニングに利用します。このため、クリプトジャッキングは被害者が気付きにくく、対策が遅れることがあります。

クリプトジャッキングの対策としては、エンドポイントセキュリティの導入、ブラウザ拡張機能の利用、ソフトウェアの定期的な更新、不審なリンクや添付ファイルの注意、ネットワーク監視の強化が効果的です。また、IoTデバイスのセキュリティ強化やクラウドサービスの認証情報保護も重要です。

今後、クリプトジャッキングはますます高度化し、多様なターゲットを狙うようになると予想されます。これに対処するためには、個人ユーザーと企業の両方がセキュリティ意識を高め、包括的な対策を講じることが必要です。セキュリティ企業やクラウドプロバイダー、IoTデバイスメーカーの協力によるセキュリティ対策の強化も不可欠です。

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